泣き言になるが、年齢とともに海外旅行がきつくなる。現金なもので、観光旅行なら問題ない。
今回の米国・サンフランシスコへの出張でも、向こうにいる間ずっと時差ボケに悩まされた。
日本に戻っても、時差ボケから回復するのには少々時間を要した。
久しぶりの米国・西海岸は、数十年ぶりの異常気象のため、連日雨に見舞われた。
サンフランシスコ・ジャイアンツの開幕戦も、豪雨のため2時間近く開始が遅れていた。
また、10度を下回る気温が続き、「まさか」のために用意していったセーターが役立った。
久しぶりのアメリカは、この異常気象だけでなく、随分と変貌を遂げていた。
出張の訪問先で得た貴重な情報を含め、最新の米国事情をお伝えしたい。

「ゴールデンゲートブリッジ(金門橋)」(同行した岩本堯氏が撮影) 今回出張の目的は、自動車保険で驚異的な成長を遂げているプログレッシブという損保社の通販部門社長との面談を行うためであった。この会社の本社は、オハイオ州クリーブランドにあるが、この社長は金門橋の向こう岸にオフィスを構え、近くの山の上に住んでいる。
米国の損保産業は激烈な競争環境にあり、最近は通販損保が急拡大を遂げている。
通販部門トップのこの方は、全米への指示をこの片田舎から飛ばしているわけである。
電子会議や電子メールという便利な環境が、こういう勤務形態を可能にしている。
金門橋の向こう岸は超高級住宅街であり、ヨットハーバーのある羨ましい職場環境であった。
アメリカは今大変な住宅ブームであり、特にサンフランシスコ地区の住宅の値上がりが激しい。市内で1億円以内の住宅を探すのは難しいそうで、バブル期の日本の状況に酷似していた。 ライバルはGEICO(ガイコ)社
米国の自動車保険通販が市場に認められるようになったのは、日本より5年以上前のことである。
米国の自動車保険そのものが激烈な競争環境にあるが、ここ10年間における最大の変化は通販によってもたらされている。自動車保険市場のトップ10に通販会社が3社も顔を出している。
プログレッシブ社は、米国自動車保険市場で10位以下にすぎない中堅損保であったが、ここ10年間で年平均18%もの急成長を遂げ、トップ3に急浮上した会社である。通販部門で急成長をしているが、本来であればライバルの代理店を通した販売も行っている、というユニークな損保である。
トップ10に名を連ねている他の通販系の2社は「GEICO (ガイコと読む)」と「USAA」(米国軍人相手の損保)という会社で、通販でしか保険を販売していない。「GEICO」とは、Government
Employees Insurance Company (政府役職員の保険会社)の頭文字をなぞった会社であり、日本で言えば公務員共済のような損保社であった。
それが、規制緩和の中で、政府役職員以外への「外売り」が自由になると、インターネットや電話を使った「安売り」で猛烈にシェアを伸ばし、現在シェア4位であり、3位のプログレッシブ社に肉薄している。面白いのは、この会社のマスコットである。下のイラストを見て欲しい。

Wikipedia ホームページより
GEICO社は、マスコットにヤモリを起用しているのである。ヤモリは、英語では「GECKO(ゲッコーと発音する)」であり、ガイコと発音が似ており、「幸運を運ぶ」縁起の良い生物ということで、この気持ちの悪い生物をマスコットにしている。
プログレッシブ社の最大のライバルは、GEICO社だそうであり、お会いした社長はヤモリのマスコット人形を取り出して見せてくれた。ところが、プログレッシブ社を訪問した翌日の「USA TODAY」紙のビジネス面トップには、このヤモリの絵が大きく取り上げられていたのである。
2005年度の損保広告宣伝費が紹介されており、首位にGEICO社が踊り出たとの記事である。
1位: GEICO社 463億円(1ドル=115円で換算) 対2001年度(2.3倍)
2位: ステートファーム社 352億円( 同上 ) 対2001年度(30%増)
3位: オールステート社 329億円( 同上 ) 対2001年度(4.3倍)
ステートファーム社やオールステート社は、全米1位と2位の損保であり、ステートファーム社の保険料売上規模は、GEICO社の約4倍である。GEICO社の広告宣伝費の凄まじさが良く分かる。
プログレッシブ社がGEICO社を恐れる一端を垣間見ることが出来た。
2006年度は巨大ハリケーンの当たり年?
日本でも、ヤモリは「家守り」であり、害虫を食べてくれることから縁起の良い生物であると言われている。このような縁起担ぎは世界中で共通するようだ。実は、我が家にも棲息している。
ところで、「いざ」と言うときに家を災害から守ってくれるのは、火災保険や住宅総合保険である。
プログレッシブ社がユニークなのは、この会社は個人用自動車保険しか扱っておらず、大企業向け自動車保険や住宅総合保険に当たる「ホームオーナーズ保険」には見向きもしないのである。
その理由は簡単で、「儲からない」からである。こういう「選択と集中」がアメリカ企業の凄さである。
確かに、日本とは違って米国のホームオーナーズ保険は、過去10年間、毎年赤字続きである。
1992年、ハリケーン・アンドリューで約2兆円の支払い、2004年、ハリケーン・チャーリーで約1兆円の支払い、そして2005年の昨年は、ハリケーン・カトリーナで4兆円もの支払いである。
プログレッシブ社がホームオーナーズ保険を扱っていない戦略は、これまでのところ大正解である。ところで、4月5日の「USA TODAY」紙の社会面トップは、2006年のハリケーン来襲予報記事であった。これが何とも衝撃的なのである。見出しは、次のとおりである。
Hurricane prediction: Busy, again
「ハリケーン来襲予報 再び頻発か?」、とでも訳すのだろうか?
特に衝撃的なのが、巨大ハリケーンの来襲予想の多さと、その外れ方である。記事によると、最近は事前の来襲予報より大きく上方に外れる傾向にあるらしい。2004年(予想3個:結果6個)、2005年(同 3個:7個)となっており、巨大ハリケーンは予想の倍以上も来襲しているのである。
それでは、肝心の2006年における来襲予想はどうなっているのか?
ハリケーン全体で9個、巨大ハリケーン5回が来襲予報個数である。ちなみに、昨2005年は、ハリケーン全体が7個の予想に対して、実際は15個もの来襲であったのである。
また、「USA TODAY」紙は、カトリーナクラスの超巨大ハリケーンが80%以上の確率で、2006年に米国本土を襲うだろう、とショッキングな関連記事を載せていた。
地球温暖化対策にあまり熱心に取り組んでおらず、特に「京都議定書」の批准に徹底して反対している米国は、そのツケを今年も払うことになるのだろうか? 「USA
TODAY」は、日本でいえば「夕刊フジ」や「夕刊ゲンダイ」のような新聞である。
一般大衆が興味を持ちそうな記事を、かなりセンセーショナルに取り上げる傾向が強い。
僅か75セント(90円弱)で買えるので、日本の新聞よりは割安である。
アメリカでは最大の発行部数を誇っており、米国民が今何に関心を持っているかを知るには格好の新聞であろう。この新聞は、「社会」「政治」「経済」「スポーツ」など分野別に束が分かれており、読む側に立った工夫がなされている。例えば、トイレに持ち込むのに便利である。
GEICO社のヤモリが掲載されていた同じ4月6日の1面トップ記事は、「サンフランシスコに巨大地震の恐れ 問題は何時発生するかだ!」、という内容であった。
その4月6日、筆者はディジタル一眼レフを抱え、サンフランシスコのダウンタウンを3時間くらい掛けて歩き回っていた。ダウンタウンを克明に見るのは初めてであったが、古いが個性的で芸術的なビルと、機能的で近代的なビルが見事な調和を見せている素敵な街並みであった。
その典型が下の写真である。一見すると神戸や横浜の街並みに似ているが、ビルそのものの素晴らしさは、圧倒的にサンフランシスコが上である。

筆者撮影(2006年4月6日)
ただ、巨大地震が発生した場合を考えると、美しい景観とばかりは言っていられない。地震に関する解説記事では、「数千もの立替が必要な古いビルがある」という警告を発していた。
さて、日本である。ゴールデンウィーク入り直前のある日、夕刊の見出しが目に飛び込んできた。「連休中に大地震が発生か?」、メディアの習性は古今東西変わらないものらしい。
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