とにかく今年の夏は暑かった。筆者の住む日野・八王子地区でも、連日37度を越える猛暑が続いた。例年だとこの時期は、お袋の見舞いを兼ねて札幌に逃避しているが、今年は「狭窄性腱鞘炎(通称バネ指)」を悪化させてしまい、左手親指が曲がったままで動かなくなった。
やむなく手術に踏み切り、自宅療養を余儀なくされたのである。身体が不自由な上に、仕事部屋のある2階は、冷房の利かない暑さである。東京の夏は何時もこんなに暑かっただろうか?
8月16日、岐阜県多治見市と埼玉県熊谷市で、従来の山形市の持つ記録を抜き、40.9度の気温を計測した。下の写真は、日本最高気温を記録した熊谷市の掲示板前で記念撮影する親子である。百貨店が独自に設置した温度計は、何と43度を示している。

asahi.comウェブサイトより
多治見市は、翌17日も40.8度を記録し、3日連続で40度を越える暑さとなった。
この記録は観測史上初めてのことらしい。一方、この暑さを「街起こし」使おうというのが多治見市の戦略である。「日本一『暑い』多治見市は、おもてなしも『厚い』」と書いたステッカーを市内の商店街に配り、観光客を呼び込もうという作戦である。さすがに、信長さんが築いた街は、したたかである。
この暑さにいささか「逆切れ」状態の筆者は、気象庁には何の責任が無いことを知りつつも、気象観測の中心に位置する気象庁に、暑さのはけ口をぶつけることにした。 「梅雨明け宣言」への疑問
今年の気象庁は、大きな失敗を繰り返している。先ず、当初の長期予報である。今年の夏は「猛暑」との予報を流していた。それが、「梅雨明け」が8月にずれ込む中で、一転して「平年並みの暑さ」に予報を修正したのである。皮肉なもので、予報を修正した途端に、この猛暑である。
そもそも梅雨明け時期の判断そのものがおかしかったのではないか、と筆者は考えている。
気象庁によれば、今年の梅雨明けは8月1日である。梅雨明けは、例年より10日以上も遅く、過去4度目となる遅さであった。一方、我々の感覚では、今年の「梅雨明け」宣言は遅過ぎた。
7月末頃の日記を振り返ってみると、7月21日頃から連日30度を越える暑さが続いている。23日に一雨が来るが、たった1日で猛暑に戻っている。梅雨明けの印と言われる雷も良く起こっていた。
写真は、都心に落ちる雷の様子である。

都心の落雷風景(kosingai.cocolog-nifty.com)
鳴くものは鳴いて梅雨明け告げにけり
インターネットで見つけた素敵な句である。庶民感覚では、今年の梅雨明けは7月20日前後である。庶民は、梅雨前線や太平洋高気圧等の位置よりは、雨量や気温の変化、あるいは雷や蝉の声などに耳を傾けて、季節の移り変わりを感じてきたのだ。そのような感覚を大事にしたほうが良い。
気象庁は、梅雨明け時期の判断などに無駄な税金を使わずに、長期予報の精度を上げることに全力をあげて取組んで貰いたい。そもそも、「梅雨明け」宣言は、マスコミからの要請に基づいて始めた業務のようだが、マスコミの姿勢にも問題がある。こんな判断を「お上」に頼る必要はないと思う。
天気予報は民間に開放され、自由化されている。マスコミは、街の声を集め、気象予報士の判断を交えて独自の判断を公表するのである。選挙の開票速報における「当確」判断の要領だ。
「NHKが遂に梅雨明けを宣言した」、「今年の朝日新聞は未だ出さないのか?」など各社が独自の予報を競いあうのである。この方がよほど面白いと思うのだが。 台風の「名付け方」への疑問
次に、下の表をご覧になって頂きたい。
日本損害保険協会が公表している、過去の台風による損害保険会社の支払った保険金上位5件である。(同協会のHPより)

この表は、日本損害保険協会の公表している図をそのまま借用しているが、こうやって一覧にしてみると、台風の名前に個性がないことに気付かれると思う。それぞれの違いが分らないのである。
一方、1991年の「台風19号」であるが、この台風の別名は「リンゴ台風」である。この名前を聞くと、日本海を猛烈なスピードで駆け抜け、大量のリンゴを落とした「風台風」を思い出すはずだ。
実は、台風やハリケーンなどの命名法には、「番号方式」と「リスト方式」の2通りがある。日本の場合は、1951年の米軍占領統治時代までは、「リスト方式」を取っていた。「リスト方式」とは、予め決められた台風名(米国は人名)のリストから、順に名づけていくやり方である。
戦後間もない頃の日本を襲った、「カスリーン台風(1947年)」や「アイオン台風(1948年)」、あるいは「キティ台風(1949年)」等の名前を覚えている方も多いと思う。
一方、「番号方式」というのは、台風シーズンにおける発生順を表す番号を、そのまま名前として使う方式である。お役所的な便宜主義であるが、この方式は、覚えにくいという決定的な欠点を持つ。そのため、大きな被害をもたらしたような台風には、別の名前をつけるのが日本の方式なのだ。
例えば、1954年の台風第15号は「洞爺丸台風」であり、1959年の台風15号は「伊勢湾台風」である。いわばニックネームだが、問題は名前が後から遡ってつけられることだ。9月7日に首都圏を直撃した「台風9号」も、来年には「台風9号、どんな台風だっけ?」となる筈である。

函館市HPより
「番号方式」の持つこのような欠点から、世界の大勢は「リスト方式」に移行している。中国も「番号方式」から「リスト方式」に移行中と聞く。「番号方式」を守っているのは日本くらいなのである。
実は、あまり報道されていないが、平成12年(2000年)から、北西太平洋や南シナ海の領域で発生する台風には、この地域固有の名前をつけることになっている。例えば、今年の「台風9号」には「フィートウ」という名前がつけられている。
ミクロネシアの花の名前であるが、気象庁はこのアジア版の名前を使用していない。
ただ、この「リスト方式」では、毎回外国の名前が付くため、全く馴染みがないという欠点がある。
個人的には、日本人名による「リスト方式」の方が良いと思っている。
「今度の真紀子台風は、暴れ馬らしい」とか、「のび太台風は小さくて、可愛い」などとなるわけだ。
台風の「大きさ」や「強さ」の表し方についても、日本の方式には文句がある。
日本では、「大きくて、強い」などという言い方で、台風の勢力を表す仕組みになっている。
「大きい」とは台風の強風域の広さ、「強い」とは、中心域の最大風速をそれぞれ表している。
しかし、「強い」、「非常に強い」それに「猛烈な」という形容詞で、一定の風速域を表すなど、分りにくいことおびただしい。一方、アメリカでは、ハリケーンの勢力をカテゴリー「1」から「5」という数値で表している。
2004年8月に発生し、ニューオーリンズ市を水没させた「ハリケーン・カトリーナ」は、カテゴリー「5」である。どう見てもこの方が合理的である。
庶民が求めているのは、先ずは分かり易さや、覚え易さである。気象予報は、時に生命に直結するだけに、解説抜きの分かり易さを追求して欲しいものだ。
つい先日になって、気象庁は「今年の梅雨入りは、実は1週間遅れでした」と、なんとも格好の悪い訂正報道を行っている。全く、困ったものである。 |