今年の流行語大賞には、“はにかみ王子”と並んで、
“(宮崎を)どげんかせんといかん!”、が選ばれた。これは言うまでもなく、宮崎県の東国原(そのまんま東)知事のキャッチフレーズであり、彼が知事就任のスピーチで使った言葉である。選考委員は、なんとも味な選定をしたものだ。
この賞は、1年の間に発生したさまざまな「ことば」のなかから、その年の世相を衝いた新語・流行語を選ぶものだ。1984年に創始されたが、最初に大賞に選ばれたのは、“オシンドローム”である。NHKの朝の連続ドラマ「おしん」が大ブームとなり、この流行語を生んだ。
その後数多くの流行語が生まれたが、方言を使ったこのような直截な言葉が大賞に選ばれたのは初めてのことだ。下の写真は、大活躍の東県知事に花束が贈呈されるシーンである。

www.geocities.jp/sakurafc2005
一方、この選定について、世論の評価は真二つに割れているようだ。
「選考委員はおかしい。流行語とは、一般市民が日常会話で何気なく使ったりする言葉だと思う。大賞の2つは日常会話で使わない」、というのが代表的な反対意見である。
反対者は、“そんなの関係ねえ”、“別に”、などの流行語を推しているようだ。確かに、この二つの言葉も大変な流行語となっている。どんな事件が起きても「そんなの関係ねえ」とうそぶき、どんな感想を聞かれても、「別に」と、突き放すのが最近の世相のようなのだ。
ただ、筆者は、あえて東知事の“どげんかせんといかん!”という迫力ある言葉に一票を投じたい。庶民の目線から政治を徹底して見直し、自分達の知恵で暮らしを変えようとする一生懸命さこそ、閉塞感の漂う最近の政治、経済を変える唯一の方法と考えるからだ。
今回は、地球温暖化の対策のために、世界中で起きている“どげんかせんといかん!”の流れを追ってみた。決して、“そんなの関係ねえ”とも“別に”、とも言っていられない時代なのだ。 世界中で発生している気象災害
先ず、次の2枚の写真をご覧になって頂きたい。左の写真は、たった1時間の豪雨で市内が水浸しになった河北省の様子である。右は、長江が洪水となり、それを見物する武漢の親子連れである。

河北省(1時間の雨でこの水害) 武漢の洪水(何れも、china-bnews.com から引用)
国連の世界気象機関(WMO)は、2007年に入ってから、世界中で洪水、暴風雨、熱波、寒波などの異常気象が発生しているとの報告書を発表した(2007年8月)。地表面の温度については、1月と4月に観測史上最高を記録したと伝えている。以下、各地で発生した凄まじい異常気象である。
・モルディブでは、4.5メートルの高波が押し寄せ、各地で洪水が発生(2007年5月)
・英国では長雨のため洪水被害が発生(2007年5月および6月)
・中国南部の豪雨、台風被害(2007年6月) (注)上記の写真はこの様子を伝えている。
・アラビア海で観測史上初のサイクロンが発生(2007年6月)
・南アジアの豪雨、洪水被害で3000万人が被災(2007年夏)
これらの、気象異常の原因が、地球の温暖化であり、それを引き起こしているのが二酸化炭素ガスに代表される温室効果ガスであることは、ようやく常識となりつつある。
その温室効果ガスを、世界の先進諸国が協調して削減しようと協定したのが、1997年に議決された「京都議定書」である。当時の川口順子環境大臣が議長を務め、ようやくまとめ上げた環境対策のバイブルである。細かい点はともかく、その骨子は次の2点に集約される。
(1)2008年から2012年までの期間中に、先進国全体の温室効果ガス6種の合計排出量を1990年に比べて少なくとも5%削減する。国別の削減目標は、概ね、8%(欧州各国)、7%(アメリカ)、6%(日本)とする。
(2)中国、インドなどの発展途上国には削減目標を与えない。
この「京都議定書」に対して一貫して冷たい態度を取ってきたのが、世界最大の温室効果ガスの排出国であるアメリカである。アメリカの反対理由は、中国等の発展途上国がこの枠組みに入っていないこと、および、自国経済への悪影響である。ブッシュ大統領のなんとも身勝手な政策である。
“オーストラリアをどげんかせんといかん!”
そのアメリカに追随し、「京都議定書」の批准を拒んできたのがオーストラリアである。オーストラリアは、アメリカのイラク政策にも追随しており、アメリカから見ると、イギリスや日本以上に頼れる国であったのだ。ところが、そのオーストラリアで行われた先の総選挙で大異変が起きた。
野党の掲げる政策の柱は二つ、「イラクからの段階的撤退」と「京都議定書の批准」である。野党労働党の若き党首ラッド氏(50歳)は、“オーストオラリアをどげんかせんといかん”、と宣言したのだ。
11月24日に実施された総選挙の結果は衝撃的だ。野党の地すべり的大勝利である。
それまでの与党の自由党は、党首であるハワード首相まで落選する始末である。

選挙に敗北し自らも落選したハワード前首相(山陽新聞オンライン)
12月3日に新政権を発足させたラッド首相の動きは素早い。直ちに、「京都議定書」を批准すると同時に、イラク駐留豪軍の撤退のため、米国政府との交渉を年内にも開始すると発表した。
さらに、「気候変動大臣」のポストを新設し、「ポスト京都」に向けての積極的姿勢を示したのだ。
一方、「京都議定書」では、温室効果ガスの削減目標を課されていない中国も、10月に開催された共産党大会の中で、「地球温暖化対策に向け積極的な貢献をする」と発表した。
また、「ポスト京都議定書」の枠組みづくりに協力する、との意欲を見せたのだ。
原油を湯水のように消費し、近いうちに米国の温暖化ガス排出量を抜くのが確実な中国も、“温暖化をどげんかせんといかん”、と気がついたのだ。世界の政治は、間違いなく「ポスト京都」の枠組み作りに向けて動き出している。一方、その動きのさらに先を行っているのがドイツである。 “原発をどげんかせんといかん!”
日本を始め、世界中が温室効果ガスの削減の「切り札」としているのが、火力発電から原子力発電への切換である。特に、中国(新規開発、10基)、インド(同8基)、韓国(同8基)などアジア諸国の開発計画が顕著となっている。日本も、現在の54基を67基(新規開発、13基)に増やす計画だ。
(2005年12月末現在 日本原子力産業会議調べ)
このような世界の大勢に対して叛旗をひるがえし、“脱原発政策”、を掲げているのがドイツなのだ。2020年までに原発依存度をゼロに持って行こうとしている(現在の日本は、3割の依存度)。ドイツの地球温暖化対策の骨子は、「環境税」の導入と、「再生可能エネルギー普及の促進」である。
「再生可能エネルギー」の中心に位置しているのが、「風力発電」であり、既に全電力の11%を風力発電によって達成している。下のグラフは、驚異的な伸びを示す、ドイツの風力発電の実績だ。

ドイツ環境省、ドイツ風力発電協会の公表数字 ドイツ環境省は、風力や太陽光など再生可能なエネルギーを利用した電力消費量の割合を、2030年に全消費量の少なくとも45%とする新目標を発表した。また、ドイツは欧州連合(EU)議長国として、温室効果ガス削減に向けた意欲的な目標設定に、加盟国首脳の同意を取り付けたのである。
最先端を走るドイツに比べるまでもなく、日本の地球温暖化への取組は遅々として進んでいない。京都議定書で義務づけられた削減目標の達成も全く無理な状況だ。また、「京都議定書」で当時の世界をまとめ切った日本が、「ポスト京都」には何らの発信もしていないのである。
風力発電の普及も、欧米に比べて大幅に遅れている。日本国内での風力発電の累計導入量は2006年3月時点で1050基、総設備容量は約108万kWであり、標準的な原発(100万kW前後)の1基分に過ぎず、微々たるものに止まっている。
来年は、北海道の洞爺湖で、「地球環境サミット」が開催される。ここでは、間違いなく「ポスト京都」に向けての枠組みが論議されることになる。鴨下環境相に恨みはないが、この重要な時期の環境大臣としては、何とも軽量だ。テレビなどメディアへの露出も極端に少ない。
「気候ネットワーク」など、環境関係の6つの非政府組織(NGO)は11月21日、鴨下環境相に対し、2013年以降の「ポスト京都議定書」をめぐる国際交渉で、日本がリーダーシップを発揮するとともに、同議定書が定める温室効果ガス削減目標の達成に向け、国内対策を強化するよう要請を行った(GreenpeaceのWebサイト)。当然の要請である。
現在問題となっている「道路特定財源」の取扱についても、これを「環境税」に組み替え、地球温暖化対策のために使うことを考えるべきである。この財源を、風力発電や太陽光発電の促進に使うのだ。温室効果ガスの利用促進に繋がる暫定税率の廃止などは飲める案ではない。
「必要な道路は作る」、「道路はいらない」といった低次元な話は、そろそろ切り上げてほしい。
“どげんかせんといかん”のは、日本の政治家の「志の低さ」と「内向き」の姿勢である。 |